HIPHOPコレクティブWYBH(우주비행:宇宙飛行)所属、GIRIBOYなどとの協働で知られるプロデューサーCosmic Boyのセカンドアルバム。シンガーとしてyoura、Meegoを迎えたタイトルトラック「Can I Love?」では刹那的な出会いと別れ、その後も人生は続いていく物哀しさをあくまでさらりとした質感で描く。その他にもTHAMA、GIRIBOY、george、OLNL、FishermanなどK-R&Bシーンの人気アーティストが集合した今作は、K-R&Bの金字塔と言って差し支えない作品だろう。
リード曲「RUN2U」では「傷付いてもいい 君の元へと走っていく」と迸る恋心を疾走感のあるトラックに乗せて表現。その他にもコンテンポラリーR&B「247」、メンバーの個性を存分に活かしたコーラスワークが素晴らしい「BUTTERFLY」など名曲揃いだが、中でもK-POPで最も早くDrillを取り入れた(違ったらごめんなさい)「I WANT U BABY」が白眉。
前述のCosmic boyと同じくWYBH所属、HAYAKE名義でGIRIBOYなどの楽曲プロデュースを経た後にリリースされたJiwooとしてのデビューアルバム他者とのすれ違いを「死ぬまでこの蜃気楼の中」とスムースかつ物憂げに歌う「Comme des Garçons」をはじめ、ジャズとR&Bを類稀なる手腕で融合させた楽曲を全6曲収録。
オーディション番組『Girls Planet 999』、『SHOW ME THE MONEY』を経てソロデビューを果たしたユ・ダヨン。デビューシングル「down down down」にはCha Cha Malone、Giselle、oceanfromtheblueというK-HIPHOP / R&Bの人気プロデューサー、シンガーが制作し、TikTok以降のキャッチーさと洗練されたグルーヴ感を融合させている。心を傾けた相手にハマっていく歌詞もキュートで、アイドルとHIPHOP / R&Bのシーンを越えた出自を持つシンガーという意味でも今後が気になる存在だ。
年始からシングルを連続リリースしていたICHILLIN’がその集大成となるミニアルバム『ON MY LIPS』をリリース! 制作にRed Velvet「Iced Coffee」、tripleS「Seoul Black Dress」などに携わったAlina Smithなどが制作に参加したリード曲「ON MY LIPS」は、後期おまごるや初期Weeeklyを感じさせる可愛らしくキャッチーなポップチューン。この子たち(っつかPD)は”K-POP”をやろうとして結果type beatみたいになっちゃうきらいがあるように思ってましたがこういう曲でやっとその路線がハマってきたのかな……。MVはウェスアンダーソンみとIVEのラブダイブみの折衷、っつか全編ロケなのやっぱり予算ないんだろうな……と思ってしまいますが音盤初動は歴代最高らしい。がんばれ!!
HYBE傘下BE-LIFTよりILLIT(アイリット)がデビュー。収録曲のすべてが3分を切る潔いデビューEP『SUPER REAL ME』、相当良い……!! なんかハイブのクリエイションって北米メインストリームの追随って感じでつまんねー、みたいな印象あったんすけど若干"オレらが好きな第3世代K-POP"の雰囲気があって今後が楽しみです。
AP AlchemyのボスSwingsが新作アルバム『Upgrade V』をリリース。「WORK」は文字通りのマッチョさを見せつけつつスマートにカマしてます。THAMAがドレイクみたいになってる収録曲「GOT YOU」とかもう最高。長めのスキットが3つも入ってて通しで聴きづらいのが難点かなーデラックス盤が出るらしいのでそのあたり解消されてるといいけど。
DJ Wegun - Trading Places (feat. DeVita & Jay Park)
リード曲「XXL」はK-POPの偉大なるオリジネーター・ソテジワアイドゥル「Come Back Home」を引用しつつ現代的なアレンジを施したビートに各メンバーのスキルフルなラップの連打!! クレジットを見る限り作詞はメンバーではなくPDチームによるものですがそれにしたって各メンバーの特に後半のソネくんのパートがカッコいい。
THE MUZEエンターテインメントより5人組グループ・RESCENE(リセンヌ)がデビュー!! サバ番出身者やMAZE:の中の人など話題性のあるメンバーが集まってますが第3世代K-POP楽曲の夢幻的な雰囲気もありつつ洗練されたハウス楽曲「Yo Yo」かっっっなり良い!!! 本チャンのデビューは3/26を予定しているそうです。
金銭を巡るゴタゴタが記憶に新しいDPRクルーから新メンバーがデビュー。同クルーからDPR IANを招いたリード曲「Do or Die」はいわゆるEDMジャンルの楽曲。アルバム客演にはKインディーシーンで今最も注目されているThe Deep、1300、ODEEにoygilにロユナとジャンルを問わない人選を行っており幅広いジャンルが楽しめる1枚になっています。
tripleSナキの姉こと(?)BIBIがシングル『Bam Yang Gang』(栗饅頭)を発表。オルタナR&B~HIPHOP的な作風を得意としてきた彼女ですが今作はプロデューサーとしてチャンギハ(チャンギハと顔たち)が参加、ジャズっぽい雰囲気の可愛らしい楽曲になっています。カップリング曲「Sugar Rush」もカッコイイ!
とにかく多作かつヒットメーカーのリーラマーズともはや完全復活のYoung B(本名:)によるコラボEP『L&B』がリリース。入隊を控えSik-K, HAONとのEP『3=1』、ソロ・アルバム『YOUNG BOY L』も連続でリリースしそのクオリティに脱帽&しばらく新曲聴けないのか……と少し残念な気持ちに。
ヒット作を多数生み出してきたプロデューサーデュオ・GroovyRoomがLE SSERAFIMホ・ユンジンとCrushを招いてシングル「Yes or No」をリリース。聴く前から名曲だと分かるメンツですが聴いたらやっぱり名曲、トレンドである2stepのリズムパターンを取り入れつつ客演2名のボーカル合戦の様相も呈しておりめちゃ耳が幸せ!
アンダーグラウンドシーンを席巻するAP Alchemyによる「Talk Money MEGA Mix」がリリース。同レーベルに所属するDon Millsや天才ノチャン、DAMINIだけでなくskyminhyukやSaint Pablo、CHERRY BOY 17などの新鋭、中堅CHANGMO、SINCEがサプライズ参加の全21人によるマイクリレー! 何よりレーベル代表スウィンスが先頭と〆を務めそのスキルを見せつけています。どんだけラップするんだこの人
メンバー全員が非アジア圏出身という異色のガールズグループBLACK SWANからファトゥがソロデビュー。リード曲「The other side」はオーセンティックなR&B楽曲にラップと歌唱を織り交ぜたボーカル……と書くとよくありそうな感じになってしまいますがめちゃくちゃカッコ良い! 収録曲も尽くカッコいいしこれみんな聴いた方がいい。
K-POPシーンにおいて数々の名曲を生み出してきたブラック・アイド・ピルスンが全面プロデュースする6人組ガールズグループ・STAYC(ステイシー)。キャリア3年目を迎えた今年(2023年)にはMelon Music Awardで「今年のミュージックビデオ賞」を受賞し、更にその人気と評価を確固たるものにしつつある。そんな彼女たちが12月6日に日本活動の第2弾シングルとしてリリースしたのが、今回取り上げる「LIT」だ。
各メンバーのソロ楽曲からグループとしての楽曲までそのクオリティの高さでK-POPシーンに衝撃を与え続けるKISS OF LIFEが自身2枚目のミニアルバムをリリース。どっから予算出てんだ……と思わざるを得ない超ハイクオリティMV(殺陣まである!)とクールな楽曲、御託はいいのでとりあえず聴いてください。X-CONで見たかったなあ!!!!
そろそろ4年目、SM所属のガールズグループaespaが先行シングル「Better Things」を含む超ド級ボスラッシュEP『Drama』をリリース。歪んだ電子音からドンドコベースからのエレキの鳴きがHYPER LINKの演出を思い出させる「Drama」の前に我々はひれ伏すしかないのです……。ドラマとトラウマで踏むのシンプルだけどカッケー!収録曲の中だと「Trick or Trick」のビチョビチョのサブベース(?)からハイパーみを感じて1番好き。
今最も注目すべきトラックメーカー・SSWのKaiavantが新作EPをリリース。今作は前作のアブストラクトHIPHOP的なアプローチではなくアンビエント寄りの情感のあるR&B楽曲が中心。「Dream on a summer night」のMVではなんと本人がコンテンポラリー調のダンスも披露しています。すごい。
「Allergy」と「Queencard」は前後編の関係、2つで1つの物語になっている。前編にあたる「Allergy」では、Instagram風のフィードをガラケーで見るシーンから始まる。フィードに映る各メンバーの姿と主人公を演じるソヨンを対比させながら、「インスタもTikTokも嫌い」「私だけ持ってないCHANELのバッグ」「世界は私がいなくても回っていく」とついついSNSで見る他人の姿と自分を比べてしまう様子を描き、サビでは「なんで私は可愛くないの?セクシーじゃないの?」「誰か私を愛してよ」と羨望、自虐、自己嫌悪を爆発させる。とはいえ涙のフィルターをかけたライブ配信風の画面の中で「Why ain’t I pretty?」と叫ぶミヨンや、2番サビのパーティーのシーンではキラキラして見える画面の向こうの彼女たちにも主人公と同じような苦悩があることを示している。中盤あたりで主人公は美容整形の医師を訪れるもあまりの費用の高さに診察室を飛び出すのだが、そこで同じ格好をしたミンニに遭遇。「あなたも私みたいになれる!」と言われたことで余計にコンプレックスが刺激され、最終的には手術することを決意。ストレッチャーに乗ったソヨンの顔のアップと「マスクを装着してください。ゆっくりと眠たくなってきて、目覚めたらあなたはクイーンになっています(意訳)」というアナウンスで前編の幕が下ろされる。タイトルの「Allergy」は鏡を見るのも嫌、という心情をアレルギーの症状に例えたものだ。
ここで改めて「Queencard」の歌詞をつぶさに読んでみると、「クイーンになる方法」と同じく身体に関する描写が多いことに気付く。曰く「My boob and booty is hot」、曰く「I’m twerkin’ on the runway」。前段ではそのセクシーさや美しさを称揚する姿勢を男性中心社会における女性の抑圧に繋がるものとして批判してきたが、近年のHIPHOPにおける潮流を踏まえ再度「Queencard」を読み直してみたい。
各楽曲のMVを見てもらえば明らかな通り、乱舞するbootyからはエロさよりよりむしろ見る者を圧倒してやろうというパワーを感じさせる。「I’m twerkin’ on the runway」という歌詞は、こうしたパワーに対する共感/共鳴からくるものだろう。マンガ表現の研究者でヘッズでもある岩下朋世は、女性ラッパーの楽曲MVにおける性的な表象について以下のように書き表している。
乱舞する”ホット”な身体は、男の欲望をそそりつつも弾き返して心のうちに踏み込ませない。
(岩下朋世「Tha 女子会 Is Hot フィメールをレップするラップについて」、『ユリイカ』2023年5月号所収、p231)
また、この曲の歌詞には「I wanna with you 뽀뽀 I wanna with you 포옹(君とキスしたいしハグだってしたい)」という一節もある。「포옹(ぽおん:抱擁)」はその音から「porn」とのダブルミーニングになっている、とすると、「WAP」などと同様に女性の性的欲求を率直に描くことすら成功している……というのは考え過ぎだろうか。
リード曲「Chill Kill」はドープなDrillのベースがおどろおどろしさを演出し、徐々に高まるリズム、そしてパッと明るいフルートの音色……と目まぐるしく(耳まぐるしく?)その展開を変化させる。永遠に続く日常をぶっ壊しに来たChill Killには、「Feel My Rhythm」から顕著になってきた楽曲におけるmixtureな音楽感覚が活かされている。私はこの曲を聴いて、「狂気の安らかさ、正気の狂おしさ」というN/Kのリリックを思い出さずにはいられなかった。
ワルツのリズムと重厚なサウンドが印象的な「Nightmare」では嫌な考えや暗く沈み込む気持ちを悪夢に例えつつ、サビでは温かい朝日の光のような歌声が我々の行く道を照らしてくれる。朝焼けを思わせる爽やかなメロディが印象的なEDM調楽曲「Will I Ever See You Again?」では、愛しい存在への追憶を序盤は淡々と、徐々に感情を含んでいくボーカルのグラデーションを以て魅せる。
『Girls Planet 999』出演以降『SMTM』出演やモデル活動などを継続して行ってきたユダヨンがついにソロデビュー!! デビューシングル「down down down」はCha Cha Malone、Giselle、oceanfromblueの超豪華3名による制作の上質なTrapR&B楽曲。aespa「Thirsty」からちょっとこういう系統の楽曲増えてきた感じで嬉しい。好きなので。
DPRクルーの一員にして劇場型シンガー・DPR IANが遂にアルバムをリリース。あらゆる狂気をテーマとしたこのアルバムのリード曲「Don’t Go Insane」では彼のセクシーで繊細なボーカルと軽快なグルーヴ、そして ちょっとハロウィンも意識してんのかな?といった雰囲気の凝りに凝られたヴィジュアルも必見です。
AP Alchemy「No One Likes Us」を彷彿とさせる歓声ビートからの変な声(勿論良い意味で!)とキレキレのフロウの連打、「Shooting Star」~「Kick it」のBメロ的なオートチューンR&B歌唱パート、フック部分ではSexyy Redぽい耳を惹く声裏返りフレーズを盛り込み……と単体でも強いそれぞれのパートを有機的に繋げたハイクオリティ楽曲。素晴らしい。