火気厳禁のハングル畑でつかまえて

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半地下のオタクがK-POPを語るブログ

20240420/火気厳禁的・韓国オルタナティヴR&B

皆さんは先日発売された川口真紀さん&つやちゃんさん監修の書籍『オルタナティヴR&Bディスクガイド』読みましたか? 火気厳禁は本格的にR&Bを聴き始めて日が浅い上に主に韓国の音楽しか聴いていないので、Frank OceanとかThe WeekendとかのオルタナティヴなR&Bの発生から今に至るまでの作品群を一挙に紹介してくださっているこの本をめちゃくちゃ興味深く読んでいます。最高です。韓国のオルタナティヴR&Bを紹介するパートでは『アジア都市音楽ディスクガイド』でも書いていらしたパンスさんがレビューに参加されていて、「そりゃDEANは入るよな~!」「自分はリパケ後のThe Perfect Red Velvet派だな~」などこちらも唸りながら読みました。

ということで、自分も選盤したくなったので書きます。今回は10枚の愛聴盤を紹介します。

 

実際の本はこちらです。要チェキ!

オルタナティヴR&Bディスクガイド フランク・オーシャン、ソランジュ、SZAから広がる新潮流

 

Cosmic Boy - Can I Love?(2019)

HIPHOPコレクティブWYBH(우주비행:宇宙飛行)所属、GIRIBOYなどとの協働で知られるプロデューサーCosmic Boyのセカンドアルバム。シンガーとしてyoura、Meegoを迎えたタイトルトラック「Can I Love?」では刹那的な出会いと別れ、その後も人生は続いていく物哀しさをあくまでさらりとした質感で描く。その他にもTHAMA、GIRIBOY、george、OLNL、FishermanなどK-R&Bシーンの人気アーティストが集合した今作は、K-R&Bの金字塔と言って差し支えない作品だろう。

 

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KATIE - Log(2019)

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アイドルだけでなく、オーディション番組がきっかけで人気を獲得するアーティストは少なくない。KATIEもその1人で、バークリー音楽大学在籍中の2018年に『K-POPスター』シーズン4に出演しその歌唱力で注目を集め優勝、メジャーデビューに至る。

深い奥行きを感じさせるエレクトロ・サウンドと神秘的な雰囲気でありながらも力強いボーカルが作り出す独特のフューチャリスティックな世界観が特徴で、楽曲「Remember」にはなんとあのTy Dolla $ignが客演として参加。その世界観により深みと説得力を与えている。

ちなみにCoachella2024にも出演した大人気シンガーBIBIもオーディション番組『THE FAN』出身。

 

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STAYC - YOUNGLUV.COM(2022)

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TWICEやSISTARなどの楽曲制作で有名なブラック・アイド・ピルスンが手掛けるガールズグループSTAYC。デビュー当初から「ティーンクラッシュ」を標榜しキャッチーなサウンドと思春期の心の揺れ動きを表現してきた彼女たちの3枚目となるミニアルバム『YOUNGLUV.COM』は、HIPHOP / R&Bの要素を強く取り入れた意欲作だ。

リード曲「RUN2U」では「傷付いてもいい 君の元へと走っていく」と迸る恋心を疾走感のあるトラックに乗せて表現。その他にもコンテンポラリーR&B「247」、メンバーの個性を存分に活かしたコーラスワークが素晴らしい「BUTTERFLY」など名曲揃いだが、中でもK-POPで最も早くDrillを取り入れた(違ったらごめんなさい)「I WANT U BABY」が白眉。

 

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offonoff - Boy.(2017)

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Colde、0channelの2名によるユニットoffonoff。元々DEANやCrushなどと共にクルーclub eskimoのメンバーとして活動し、2015年頃からoffonoff名義で音源をネットで公開。アンダーグラウンドシーンで徐々に注目を集めた2人による最初にして最後のフルアルバムがこの『Boy.』だ。

客演陣は同じくclub eskimoのMisoやRad Museum、DEANの他、伝説的HIPHOPユニットEpik HighのTablo、当時駆け出しのPUNCHNELLOなどとにかく豪華。魅力的としか言いようのないColdeのボーカルと、HIPHOPR&Bのセンスとアンビエント的音像を融合させたサウンドはK-R&Bにおけるチル的なイメージの醸成に影響しているのではなかろうか。アウトロ約3分(!)すら終わるのが惜しいほどに心地よい「Overthinking」まで、シャッフルせずに聴いてほしい1枚。

 

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LOONA - kim lip(2017)

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12名から成るガールズグループ・LOONA(이달의 소녀:今月の少女)の6番目のメンバーであるキムリプのソロデビューシングル。リード曲「Eclipse」はシンセ・ポップ的なサウンドを用いつつ、彼女の歌声とテンション抑えめなグルーヴ感で日食というタイトル通り陰りのある雰囲気を表現している。カップリングの「Twilight」はK-HIPHOPファンなら知らない者はいないプロデューサーCha Cha MaloneによるモダンなR&Bナンバー。彼女とジンソル、チェリの3名からなるユニットODD EYE CIRCLEもまた名盤をリリースする訳だが、それはまた別のお話……

 

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Jiwoo - Maison(2019)

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前述のCosmic boyと同じくWYBH所属、HAYAKE名義でGIRIBOYなどの楽曲プロデュースを経た後にリリースされたJiwooとしてのデビューアルバム他者とのすれ違いを「死ぬまでこの蜃気楼の中」とスムースかつ物憂げに歌う「Comme des Garçons」をはじめ、ジャズとR&Bを類稀なる手腕で融合させた楽曲を全6曲収録。

 

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EXID - Eclipse(2017)

軍の慰問公演(=ドサ回り)にてファンが撮影した1枚の写真をきっかけに爆発的な人気を得たという橋本環奈的エピソードを持つガールズグループEXID。厳しい時期が長かったもののプロデューサーはヒットメーカーとして知られる新沙洞の虎(シンサドンホレンイ)で、リード曲「Boy」はトリップホップR&Bからフューチャーベースっぽく展開するK-POPらしいケレン味のある構成。ラッパーLEのソロ楽曲「Velvet」は彼女の良い意味でクセのある歌声が耳を惹くTrapR&Bでこちらも極上、いわゆる第2~3世代K-POPの”ベタ”な雰囲気とは一線を画す作品になっている。

 

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Summer Soul - Five Senses(2019)

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1999年韓国生まれ、マレーシア育ちという経歴を持つSSW・Summer Soul。透き通るようでいてどこか気怠げ、センシュアルなボーカルがベッドルーム的なサウンドに乗ってより親密な印象を与える。「Trust Again」での呟くような節回しが良い。ジャズやファンクなど、後に続く作品群に共通する音楽的志向が垣間見える初期作品。

 

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YOU DAYEON - down down down(2023)

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オーディション番組『Girls Planet 999』、『SHOW ME THE MONEY』を経てソロデビューを果たしたユ・ダヨン。デビューシングル「down down down」にはCha Cha Malone、Giselle、oceanfromtheblueというK-HIPHOP / R&Bの人気プロデューサー、シンガーが制作し、TikTok以降のキャッチーさと洗練されたグルーヴ感を融合させている。心を傾けた相手にハマっていく歌詞もキュートで、アイドルとHIPHOP / R&Bのシーンを越えた出自を持つシンガーという意味でも今後が気になる存在だ。

 

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kaiavant - Piece of space(2022)

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アトモスフェリックなサウンドと幽幻的な歌声、ミステリアスなアートワーク――kaiavantはまさにオルタナティブR&B的なアーティストだと言えるだろう。『Piece of space』はiisoなど近年の注目アーティストを要するレーベルmine fieldからリリースされた彼女の1stアルバムだ。

物哀しいギターが響く「Oh girl」やスイスのアーティストAudio dopeを招いた「Bohemian」でアンニュイな表情を見せたかと思いきや、ハウス調の「Allow it」ではSwingsのラップとサキソフォニストJason leeの演奏が絡み合い、Kid Milliとの共演「Woo Hoo」ではドライブ感のあるビートを展開。捉えどころのない変幻自在なトラックに、耳元で甘く溶けていく彼女のボーカルが独自のアイデンティティをもたらす。

 

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ということで今回紹介したアルバムをプレイリストにまとめました。🍎ユーザーの方はご確認ください。

 

 

 

GIRIBOYとかHEIZEとかmeenoiとかyouraとかLym emも良いけど今回は取り上げず……「あのアルバムが入ってねーじゃねーか!!」と思った方は是非コメントください。それでは。

 

 

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