火気厳禁のハングル畑でつかまえて

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半地下のオタクがK-POPを語るブログ

20221022/LE SSERAFIMの体現する反骨精神――デムナ・ヴァザリアとの共鳴

はじめに

「私の首を切ってみて」と彼女は言った。しかし私が本当に興味があるのは、彼女が本当に不死であるかどうかよりも、何が彼女にそう言わしめるのか、ということだった。だから私は、剣と松明ではなく、震える指で言葉というメスを取る。自分が腕の良い外科医でないことは重々承知しているが、それでもその内臓や、骨の髄や、無意識に潜んでいるはずのその"何か"を見つけるために。

LE SSERAFIM。CHANELを意識したと思われるグループ名のロゴデザインと、かのブランドの創業デザイナーと同じく天使の名前を持つ彼女達。2作目となるEP『ANTIFRAGILE』も素晴らしい出来で、百花繚乱たるK-POPシーンの中でも一際目立つ存在感を放っている。

私は前作「FEARLESS」に続き、再び彼女達の挑発に乗ってみようと思う。彼女達の表現する「ANTIFRAGILE」という概念は、一体何処から来ているのだろうか?

 

天使か、怪物か

LE SSERAFIMについて

BTSを輩出したHYBE(元Big Hit)傘下のレーベルであるSouce Musicから2022年の5月にデビューしたガールズグループ・LE SSERAFIM(ルセラフィム)。元IZ*ONEのサクラ、チェウォン、IZ*ONE結成のきっかけになったサバイバル番組『PRODUCE48』に出演していたユンジンに加え、練習生だったウンチェとカズハからなる現在5人組のグループだ。デビュー当初はこれにガラムを加えた6人組だったが、元同級生の校内暴力に関する告発により脱退を余儀なくされてしまった。この一連の騒動は本稿の主題でないので詳しくは触れないでおく。

デビューEPのリードトラック「FEARLESS」はグルーヴィなベースサウンド主体のダンス・ポップで、中毒性の高いサビのリフレインやダンスが特徴だ。韓国のHANTOチャートではアルバム発売日に約17万枚の売上を記録し、当時のガールズグループデビューアルバムの売上最高枚数で1位となったほか、世界各国のiTunesチャートでも1位を獲得するなど話題を集めた。

 

LE SSERAFIM - FEARLESS

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LE SSERAFIMのモード感覚

このグループの魅力は、何と言ってもその「高級感」「モード感」だろう。筆者は以前、彼女たちのヴィジュアルイメージがファッションエディトリアルを志向しているとし、パリモード由来のエレガンスを獲得しつつあるグループとして紹介した。

 

kaki-genkin.hatenablog.com

 

舞台衣装としてハイブランドの服を着ることが一般化しているにも関わらず、ここまで本格的にエディトリアルをリファレンスしヴィジュアルイメージを作っているグループは他にいない。新人グループなのにここまで凝ったイメージを制作出来るのは事務所の資本力も1つの要因と言える、しかしそれ以上に、K-POPシーンの時流を読んだ上でのプロモーション戦略として捉える方が正しいだろう。

K-POPはPOPであり、大衆文化であり、消費されていくものである。1週間、1ヶ月、長くて1年の間、配信チャートのランキングを賑わせた曲も――ファッションと同じように――そのうち古くなってしまう。だからこそ、独自で最新、それでいて突飛過ぎず皆が良いと思えるようなイメージを作り出すことが至上命題となる。LE SSERAFIMは、今までもファッション誌のグラビア等でK-POPファンの目に触れていたファッションエディトリアルの要素、またガールクラッシュと呼ばれるガールズグループ界隈で流行しているコンセプトを取り入れつつ、それでいて目新しさのあるバランス感覚に優れたイメージを創出している。

 

LE SSERAFIM「ANTIFRAGILE」分析

K-POPにおけるティザー、MVの役割

さて、新曲「ANTIFRAGILE」に関連する種々の映像を見る前に、K-POPにおけるティザーやMVの役割について抑え直しておこう。

K-POPファンにはお馴染み、新曲のリリース前に必ず発表されるティザーは、新曲の予告として楽曲の一部だけを公開したり、それに伴うビジュアルイメージを先行して公開する画像、動画をいう。焦らすもの、といった意味のTeaserの名の通り、ファンの期待感を煽り、SNS上で注目を集めるための手段である。

田中絵里菜『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』によると、このティザーの文化は2008年に当時JYPエンタ所属のチョンビョンギがWonder Girlsのプロモーションの一貫として始めたのだという。それから各事務所が追随し、更に当時SM所属のミンヒジン氏がf(x)の新曲リリースに際してMVとはまた違ったコンセプトムービーをティザーとしてリリースしたことで現在の形に落ち着いたようだ。今やティザー映像は単に新曲を予告する短い動画というだけでなく、グループの打ち出す世界観を表現するものでもある。新曲のリリースを控え、ファンの期待に応えつつ、初めて観る人にも十全にそのグループや楽曲の世界観を伝えるために制作される映像なのだ。

 

ティザー「The Hydra」

続いて、LE SSERRAFIM「ANTIFRAGILE」のティザーとMVを見ていく。先にも書いた通り、LE SSERAFIMはデビュー当初からハイファッションを意識したイメージを打ち出しているが、今回のカムバックに際して公開されたティザーにもそれは引き継がれている。

 

LE SSERAFIM ANTIFRAGILE TRAILER 'The Hydra'

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彼女達の2回目のリリースとなるEP『ANTIFRAGILE』のティザー映像では、スケートボードを駆って登場したウンチェがコンテナに書かれた貨物の「取り扱い注意」を意味する「FRAGILE」に赤いスプレーで「ANTI」と書き足してEPのタイトルを表現する。メンバーはそのままコンテナを強奪し埠頭まで移動、積み込まれていた衣装を着てランウェイを闊歩。前作のティザーでもランウェイのシーンがあったが、CHANELPRADAのロゴが目立った前作に対して今回はオリジナルアイテムも多く見受けられ、メゾン・LE SSERAFIMのショー映像を見ている気分にさせられた。白黒を基調とした衣装のカラーパレットは、今作のロゴに用いられている金継ぎのゴールドとそして黄色、そしてデニムの薄い藍色が加わり、シックで洗練されていながらも前作に比べると軽やかな印象を受ける。

ティザーに登場する、スケートボード、グラフィティ、そしてランウェイ――、これらは近年モード界の中心に居座るラグジュアリーストリートの換喩として用いられている。故ヴァージル・アブローを旗手として、マシュー・ウィリアムズ、ジェリー・ロレンゾ、ルーク・メイヤー、デムナ・ヴァザリアなど新進気鋭のデザイナー達が手掛けるハイエンドストリートウェアがモード界を席巻して久しい。2016年デビューのBLACKPINK、2019年デビューのitzyらが既にラグジュアリーストリート的なスタイリングを採用しているが、グループのクリエイションを統一するコンセプトとしてこれらの意匠を取り入れたのはLE SSERAFIMが初めてであり、そしてK-POPにおけるこの路線の最高到達点を更新し続けていると言っていいだろう。

 

ウンチェが手にするオリジナルのスケートボードは、メゾンブランドとスケーターブランドのコラボレーションから着想したものだろう。2017年のLouis VuttonとSupreme、2021年のGUCCIとスケーター上野伸平、2022年のPOP TRADING COMPANYとPALACEがそれぞれBURBERRY、再びGUCCIと、スケーターたちが立ち上げたブランドと伝統あるメゾンのコラボレーションは珍しいものではなくなっている。ちなみに、BALENCIAGAの2023 SSショーティザー映像では、パリの街路をスケーターが駆ける様子を写している。

 

BALENCIAGA Summer 23 Collection Teaser

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貨物船のコンテナが積まれた埠頭でのファッションショー、という風景はLouis Vuttonの21SSのショーを想起した。これもヴァージルが手掛けたものである。

 

Louis Vuitton Men's Spring-Summer 2021 Show in Tokyo

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黒い衣装を纏ったスケーター達はKanye West(Ye)の「Heaven and Hell」のビデオを想起させる。このビデオの衣装はカニエ本人のブランドYeezyとメゾンBALENCIAGA、そして衣類量販店のGapによるコラボレーションによるもので、顔を覆うマスクと統制された色のトーンは見る者に緊張感を与える。LE SSERAFIMのティザー映像でもスケーターたちの顔は映らない。

 

Kanye West - Heaven and Hell

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前作のティザー「The World Is My Oyster」と今作「The Hydra」を比較してみると、前作はモデルのオーディション~バックステージ~キャットウォークと、ファッションショーのパブリックイメージを再現する意図が感じられるのに対して、今作はかなり現行のモードの動向も取り入れた作りになっている。BGMとリンクした演出は前作と共通しており、今作では印象的な夜→昼の場面転換に使われている。オリジナルのアイテムも前作より大幅に増えたように見受けられ、衣装も含めLE SSERAFIM独自のイメージとして強度が増している。

 

FEARLESS TRAILER 'The World Is My Oyster'

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余談だが関係者にはオリジナルロゴ入りのショッパー(紙袋)が配布されているようだ。筆者も欲しい。

 

 
 
 
 
 
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「ANTIFRAGILE」MV

続いて公開されたEPのタイトル曲「ANTIFRAGILE」MVでは、前作と同じくティザー映像とはまた違った演出が展開されている。

 

LE SSERAFIM - ANTIFRAGILE

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この曲はレゲトンというジャンルに分類される。ラテン圏を中心に発展してきた音楽ジャンルで、独特のリズム感が特徴だ。Bad Bunny、ROSALÍAと立て続けにこのジャンルの人気アーティストのアルバムリリースがあり、2022年はレゲトンシーンが盛り上がった。「ANTIFRAGILE」はROSALÍAを意識しているようで、デンボーのリズム感やピーキーなシンセサウンド、BMXが走り回る演出は勿論、歌唱における独特の節回しやブリッジ部分の猫~ライオンのような振り付けまで「SAOKO」や「CHIKEN TERIYAKI」からリファレンスしていると見受けられる。

 

ROSALÍA - SAOKO

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ROSALÍA - CHICKEN TERIYAKI

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衣装にはもはやここ最近の定番と言っていいBALENCIAGAやGCDSに加え、MARC JACOBSHYSTERIC GLAMOURの採用からはY2K的な可愛らしさ、ポップさを感じる。

 

 
 
 
 
 
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ユンジンの派手なメイクはHBOドラマ『EUPHORIA』から影響を受けたものだろう。ティザーで展開したモードの要素は抑えられ、リスナー層にも多く存在するだろう若い女性層の肌感覚のトレンドを取り入れたスタイリングが目立つ。

 

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looks of euphoria | season 2 | hbo (メイク解説動画)

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やはり、と言うべきか、今回のMVでもティザーに見られるようなファッションエディトリアル的な演出はほとんど無い。前作の分析では「楽曲自体がグルーヴィーであるために、MVでは身体と音楽の曖昧な関係から来るエレガンスを表現できなかったのではないか」としたが、「ANTIFRAGILE」のティザーとMVを見ているうちに、ティザーは解釈や考察の余地があるハイコンテクストなもの、一方MVは中毒性の高い楽曲といかにもTikTokでウケそうな振り付けというローコンテクストなものと方向性を分けることによって、ファンダムと大衆(=非アイドルファン)の2つの層に訴求しているのだと解釈を改めた。

 

路傍の反骨精神ーLE SSERAFIMとデムナ・ヴァザリア

LE SSERAFIMのメッセージ

今までは「ANTIFRAGILE」にまつわる映像に映し出されるものを分析してきた。翻ってここからは歌詞の内容を読み解いてみる。LE SSERAFIMはデビュー時から高潔で孤高、何者にも流されない自己を表現してきた。デビュー曲の「FEARLESS」では、シーンの頂点を目指す強い意志と、我々はその位置に君臨すべき存在なのだという並々ならぬ自信が歌われている。

 

LE SSERAFIM - FEARLESS

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特にサビの「What you looking at,  You should get away(何見てんだよ、どっか行け)」という歌詞は現在のアイドルを取り巻く環境―インターネット上の誹謗中傷など―も反映し、より我々に説得力と彼女達の力強さを感じさせる。むしろ、彼女達の持つ孤高さは、ヘイター(アンチ)との対立構造によってこそ演出されていると言ってもいいだろう。

今回の「ANTIFRAGILE」でもそのメッセージは変わらない。というかむしろ、今作ではより彼女たちを取り巻く言説に対するアンサーが多いように思う。

特筆すべきはメンバーのキャリアを反映した箇所だ。HKT48を経てIZ*ONEで韓国デビュー、活動期間が終わりLESSERAFIMで再々デビューを果たしたサクラの「馬鹿にしないで 私が歩んできたキャリア」、国際大会に出るほどのバレエの実力者・カズハの「忘れないで 私が置いてきたtoe shoes」など、彼女たちの経歴を反映した歌詞はファンを唸らせる。

 

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筆者はここに、HIPHOP的な「リアル」さを感じた。普段HIPHOPを聴かない方々にこの概念を説明するのは難しいが、HIPHOPにおける「リアル」とは「説得力」のようなものを指す。この歌詞には、ラッパー達による生き様やストリートライフについてのリリックと同様のリアルさが存在する。

「ANTIFRAGILE」は楽曲のジャンルこそレゲトンだが、スタイリングや歌詞に込められたメッセージはHIPHOP的、ストリート的なところが大きい。K-POPシーンの中で一際目立つ活躍をしながら、ゴシップや過熱するファンダム同士の競争にまで言及するLE SSERAFIMの姿は、ラグジュアリーストリートの中心にいながらモードという現象を批評し反抗し続けるデザイナー、デムナ・ヴァザリアと重なる。

 

デムナ・ヴァザリアとBALENCIAGA

2015年にメゾンBALENCIAGAのディレクターに就任したデムナ・ヴァザリアは、アイコニックな厚底のスニーカー「トリプルS」やロゴ入りのキャップを流行らせた張本人であり、かつもう履けないほどにボロボロなスニーカーを22万円で売ったり、オートクチュールコレクションで熟練の職人達が仕立てた最高級品のTシャツを発表したモード界のトリックスターでもある。

 

BALENCIAGA Triple S Sneaker

 

BALENCIAGA Destroyed Sneaker

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LE SSERAFIMのカムバックに先行してパリで行われたファッションウィーク。「The Mud Show」と題されたBALENCIAGAのショーは、飛沫も気にせず泥の中を歩くモデル達が印象的だった。殴られたようなメイクを施されたモデルの険しい表情は、内面に渦巻く怒りや苛立ちを感じさせる。

 

BALENCIAGA Summer 23 Collection

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腕まで覆うバッグ、精巧な幼児の人形とおんぶ紐、ロゴ入りのマウスピース(グリルズ?)、ポテチの袋を模したバッグと今季のコレクションもユニークなアイテムが目白押しだったが、筆者の目を強く惹いたのはSupreme風のボックスロゴTシャツだった。

 

 

BALENCIAGAによるSupremeのボックスロゴのサンプリング、いや、敢えてパクリと言いたくなるこのTシャツは、着古されたようによれ、ほつれ、破れ、元の形を留めていないように見える。デムナは度々このようなサンプリングの手法を用いるが、何故今回はSupremeというモチーフを選んだのだろうか。

前述のように、ストリート発のブランドやスケートボードカルチャーとハイメゾンがタッグを組むことはもはや珍しくなくなっている。愛好家から一般層まで話題を呼び、人気を集め、二次流通市場で値段が高騰するそれらのアイテム達。よく考えてみて欲しい。そんなファンにとってもブランドにとっても都合のいいコラボレーションという手法こそが、使い古され、よれ、ほつれ、破れてきてはいないだろうか。或いは、こう読むことも出来る。「コラボレーションだとか言って高ぇ金額でモノ売ったって、ストリートに何も還元してないならパクリと一緒」だと。公式のコラボレーションアイテムとして発表出来そうなところを敢えてサンプリングという手法を用いて作られたボックスロゴTシャツは、デムナ流のモード界に対するアイロニカルな批評精神そのものだ。

招待客の席に置かれたメモには、デムナ・ヴァザリアからのこんなメッセージが記されていたという。

 

「自分らしくいようとすればするほど、顔を殴られます。しかし、お互いに違うということは、なんて素晴らしいことでしょう」

「課題は、殴られたり倒されたりした後、立ち上がって本当の自分に向かって歩き続けることです」

 

(FASHIONSNAP「ラグジュアリーとは何なのか?「バレンシアガ」が泥ランウェイに込めたメッセージを読み解く」より)

 

旧ソ連の加盟国に生まれた彼の社会情勢に対する想いや精神状態も反映された今回のコレクションは、傷付き泥塗れになっても尚、自らの信念を貫くこと、自分を追い求めることの美しさを表現している。

 

「ANTIFRAGILE」 の根源

「ANTIFRAGILE」という概念は何処から来たのだろうか。MVのラストシーンではメンバーに直接隕石が衝突(!)するのだが、5人はかすり傷も負わずただそこに佇む。「どんな目にあっても心は折れない」という精神性が、「ANTIFRAGILE」という単語に凝縮されている。

シーンの中心にいる彼女達が放つ、リアルで強烈なメッセージは、モード界におけるデムナ・ヴァザリアの仕事とリンクする。周囲の環境や他者を気にせず、時折それらに打ちのめされそうになりながらも、自らのままであること。それは何度失敗してもトリックに挑戦するスケーターや、ゲトーから成り上がるためにマイクを握るラッパー、試行錯誤しながらグラフィティをボムるライター達が持つ、ストリートの精神性である。LE SSERAFIMが「ANTIFRAGILE」で表現する強さの源流は、世界に遍在する街の通りストリートにある。

 

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おわりに

ここまで、LE SSERAFIM「ANTIFRAGILE」のティザー映像と楽曲の歌詞を中心に、リファレンスソースや表現に込められたメッセージを読み解いてきた。

今作「ANTIFRAGILE」では1作目より現行のモードであるラグジュアリーストリートに接近し、スケートボード、グラフィティ、モータースポーツやバイカースタイルなどの要素を取り入れたビジュアルイメージを作り上げている。楽曲で歌われる挑発的な彼女たちのメッセージは、ラグジュアリーストリートの流行を先導してきたデムナ・ヴァザリアによるBALENCIAGAと共鳴する。そして両者が描く他者や周囲の環境に影響されない強い自己像は、ストリートのタフな精神性が根源にある。

CHANELの気高さ、そしてデムナによるBALENCIAGAの反骨精神をインストールしたLE SSERAFIM。彼女達が作品の中で志向する高級感と大衆性は、ラグジュアリーストリートという一見矛盾した概念とも似ている。K-POPシーンに降臨した天使、恐れを知らない不死の怪物――。彼女達はモードと戯れ、時にそれを突き放し、時にもつれ合いながら、これからもシーンの最先端に君臨し続けるだろう。

 

参考資料

 

 

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