火気厳禁のハングル畑でつかまえて

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半地下のオタクがK-POPを語るブログ

20221119/STAYC「POPPY」レビュー

日本国内においてはまだまだ、と言わざるを得ないが、国際的にはコロナ禍は収束しつつあるという雰囲気だ。K-POPにおいても、韓国内外でのフェス出演やコンサートツアーなどの活動が復活しつつある。韓国から物理的に距離の近い日本では、入国制限の緩和以降ライブ公演や日本での音源リリース、地上波の音楽番組に出演(なんと紅白にも!)するなど、声出しの制限などはありつつも再び盛り上がってきている。2020年デビューの新人グループ・STAYCが日本オリジナル楽曲をリリースしてデビューするのも、この大きな流れの中の出来事だと言ってよいだろう。

 

STAYCとは

STAYC(ステイシー)は2020年11月デビューの5人組ガールズグループだ。TWICEの初期楽曲などを手掛けたプロデューサーであるブラックアイドピルスンのラド氏が自ら設立した事務所の第1弾アーティスト。メンバーの平均年齢が19歳(執筆時点)と若く、フレッシュな魅力とクオリティの高い楽曲が評価されている。

デビュー時からK-POPファンの間で注目を集めてはいたが、2021年4月にリリースされた2ndシングル「ASAP」がTikTokのダンスチャレンジ経由でバイラルヒットし、知名度が急上昇した。

 

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韓国の音楽番組では番組独自のランキングを集計・発表しているものがあり、STAYCは現段階で合計11冠を獲得している(wiki情報)。こうしたランキングは音盤の売上やストリーミングの再生回数、電話投票などの集計で計算されるため、1位を取るのはかなり難しい。11冠という数字は、デビュー2年目にして強固なファンダムが出来上がっていることの証左と言えるだろう。

 

「POPPY」レビュー

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さてそんなSTAYCの日本デビュー曲「POPPY」は所謂K-POP的なFuture Bassとディープハウスの融合したような楽曲で、リリースこそ11月だがサマーパーティーのBGMにぴったりな清涼感溢れるダンスチューンだ。

前作「Beautiful Monster」とは正反対の可愛らしく甘いテイストでの歌唱がメインになっていて、彼女たちの声質が120%楽しめる。ただ可愛らしい一辺倒ではなく、中低音を担うジェイのラップとユンのボーカルが良い塩梅で入っているのも雰囲気を引き締めている。特にユンによる最後のサビの力強いアドリブは鳥肌モノだ(勿論良い意味で)。

 

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キャッチーなタイトルのフレーズの繰り返しが印象的だが、弾ける恋心をまっすぐに表現した歌詞も秀逸だ。「恋愛や友情さえも 無理しなくていいよ ありのままでいたいから」と飾らないところも彼女たちらしい。

一聴すると公園少女「Puzzle Moon」やIZ*ONE「Violeta」を思わせるサウンドだが、全体的には神秘的というより爽やかで可愛らしい印象を受ける。この違いは”グルーヴ”にあると筆者は考える。

TikTokヒット狙いだろうな~というサビの「POPPY POPPY……」のリフレインはフレーズの頭にアクセントが置かれ、4つ打ちのビートと自然に同期するようになっている。

グルーヴの演出はサビのリフレインだけではない。曲冒頭シウンパート「らしくないよ Rush Answer」、サビ後半のユンパート「シュワっとさせたい 変わりない ただ自分次  遠慮はNo No No」、Cメロのジェイパート「泡沫みたい  消えたりしない  溶けた期待 今溢れ出すの」と随所に潜ませたライムもこの曲の持つグルーヴを強化する。

特筆すべきはBメロ頭の「甘さだけじゃ物足りないわ」を「甘/さだ/けじゃ/物/足り/ない/わ」と区切っている箇所だ。似たような作例に宇多田ヒカル「Too Proud」があるが、ここではTrapにおける3連符のフロウが自然に歌の中に導入されていて独特のリズム感を生み出している。

 

 

STAYCはそのルックスやキャラクター以上に、メンバーの歌声を武器としてきたグループだ。キャリア3作目の「STEREOTYPE」はメンバーのコーラスが楽器のようにバックトラックの中に導入されている。

 

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「POPPY」は、そんな彼女たちの声の魅力を活かしつつ、ダンサブルな楽曲に合わせることでTikTok訴求も可能にした抜け目のないプロダクトだと言える。メインプロデューサーのラド氏はSTAYCの活動曲すべてに制作で参加しているし、脇を固めるwill.bとFLYTの両氏もSTAYCの最近の楽曲を手掛けている。このメンツを見るに「何らかの理由で今までのミニアルバムに入らなかった曲に日本語詞当てたのでは」とも思ってしまうが、本当のところはわからない。いずれにせよSTAYCチームが本気を出して制作したものだということは間違いないだろう。

思えば「ASAP」も、HIPHOPベースのトラックに彼女たちの可愛らしい歌声と恋に恋する若々しい気持ちを描いた歌詞、そして猫のような"ふみふみダンス"がバズっていた。バカテクボーカルによる「聴かせる歌」から一転、Y2Kカワイイ&グルーヴを強調した「踊れる歌」で日本デビューしたSTAYC。日本でもその魅力を輝かせる彼女たちから目が離せない。

 

参考資料

 

 

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